2.プロジェクトの全体像

2.プロジェクトの全体像

亀岡カーボンマイナスキームの概要
出口戦略を見据えたスキームの構築を目指して

 現在私たちは、プロジェクトにおいて以下のような構図でのスキーム、“亀岡カーボンマイナススキーム”を提示しています(下図参考)。ここでは、本スキームの概要について解説したいと思います。

 まず、間伐材やもみ殻・稲わらなど地域で未利用のバイオマス(地域未利用バイオマス)を、地域の自治体活動などを通じて回収し、炭(バイオ炭)づくりを行います。次に、つくったバイオ炭をたい肥センターで堆肥と混合し、バイオ炭たい肥をつくります。続いてバイオ炭たい肥を農地へ運び、施用を行うことで炭素貯留を行います。そして、農地に貯留された炭素分は、カーボンクレジットとして企業へ販売します。また、農地でできた農作物に対しては、付加価値化を通じて消費者へ販売します(私たちは現在、地球を冷やす“クール”な、野菜“ベジタブル”、略してクルベジ®としてエコブランド化しています)。

 このように、地域未利用バイオマスの回収炭化たい肥との混合農地施用カーボンクレジット取引&クルベジ®販売という流れを経て、温室効果ガスの削減と農山村部へ資金還流を導きます。このように出口戦略を見据えた構図で本スキームは成り立っており、これを実現するには、次のような課題が挙げられます。(プロジェクトの取組課題へ

出口戦略を見据えた亀岡カーボンマイナススキームの構図
出口戦略を見据えた亀岡カーボンマイナススキームの構図クリックで拡大します。

プロジェクトの取組課題
技術の確立と技術を活かすしくみづくり
① 地域内炭化システムの構築

 地域の未利用バイオマスを用いた、低コストで二酸化炭素削減効果の高いバイオ炭づくりの手法を明らかにします。そのために、バイオ炭の収率調査、物性評価、LCA(ライフサイクルアセスメント)などを行います。

② 炭素貯留認証システムの構築

 バイオ炭による炭素貯留(カーボンクレジット)を認証するためのしくみづくりを行います。そのために、バイオ炭による炭素貯留効果の安定性を測る実験、利害関係者との協議を通じて、認証のための規格・検証・実施体制等しくみの構築を行います。

③ クルベジ®認証システムの構築

 クルベジ®を認証するためのしくみづくりを行います。そのために、バイオ炭を施用した農地における、作物への安全性を測る実験、利害関係者との協議を通じて、認証のための規格・検証・実施体制等しくみの構築を行います。

④クルベジ®協賛システムの構築

 広告機能を兼ねたクルベジ®シールへの企業協賛のしくみづくりを行います。そのために、シールの管理・保証体制の構築、協賛による宣伝効果の測定を行います。

⑤ クルベジ®販売戦略手法の検討

 クルベジ®の普及に向けた、有効な販売戦略手法を明らかにします。そのために、都市部の小売店および地域市場(道の駅等)における来訪者への質問紙を用いた調査、一般消費者へのグループインタビューを通じた選好評価を実施します。

⑥ クルベジ®食育・環境教育の普及

 食育・環境教育の一環としてのクルベジ®利用の普及と有効性を示します。そのために、保津町周辺地域の小中学校において、紙芝居等を用いたクルベジ®農法の解説、周辺の農地や校庭でのクルベジ®栽培・献立作りなどを行います。そしてその教育効果の表れとして、環境保全活動への取組度や地域内でのクルベジ®の普及度を測ります。

プロジェクトの推進体制
産・官・学・民、多様なアクターによる恊働プロジェクト

 本プロジェクトは、バイオ炭づくりやクルベジ®の生産に関わる地域住民、地域内調整を行う地元行政、炭素貯留効果の検証、経済システムの設計、社会システムを構築などに関わる農学・経済学・政策科学等の分野に属す研究者、流通、販売を担う流通小売業者、カーボンクレジットの取引先となる環境先進企業など、様々な領域に属すアクターの参加のもと分野横断的にプロジェクトを展開しています(各組織へのお問い合わせ→お問い合わせ先のページへ)。

産・官・学・民、恊働によるプロジェクトの推進体制
産・官・学・民、恊働によるプロジェクトの推進体制
プロジェクトによる期待される波及効果
気候変動緩和と国内そして途上国の農山村再生・振興を見据えて

 まずは、本スキームの核となるバイオ炭による炭素貯留が、長期安定的に炭素を固定する手段として科学的に実証することができれば、国際的に認められる温室効果ガスの削減手段としての、新たな選択肢の提示に繋げることができます。そして、経済的インセンティブをもたらすしくみとしての、カーボンクレジット取引およびクルベジ®戦略が十分に機能することができれば、より持続的にバイオ炭による炭素貯留が可能となり、農山村部の経済的振興を伴いながら気候変動緩和へ貢献することができます。

 このようにして、将来的にはプロジェクトのフィールドである保津町において、温室効果ガスを削減しながら経済振興を導くことが可能となり、このことによって、町内外の若い世代が保津町での営農の未来に関心と希望を持つことになり、保津町の未来を担う彼らの定着誘因に大いに寄与すると考えられます。


若い世代が安心して営農に取り組める未来を目指して
雄大な牛松山と子供たちが参加する麦踏み
(2009.02.18撮影)
子供たちが参加する麦踏みクリックで拡大します。

 さらに本スキームを他地域へ普及させることができれば、国の温室効果ガスの削減目標に大きく貢献しながら、人口減少・高齢化社会の到来により存続が懸念されている農山村部の農林業・地域社会を再生、発展させる一助とすることができます。そして長期的には、途上国農山村部への本スキームの導入を通じて、世界レベルでの温室効果ガス削減と途上国農山村振興も可能であると考えられます。

 このように私たちは、バイオ炭による炭素貯留を核として気候変動緩和と農山村振興を両立する、新たな世界モデルを構築するトップランナーとしての気概を持ってプロジェクトに取り組んでいきます。