1.プロジェクトの背景

プロジェクトの背景

疑う余地のない温暖化による気候変動と農山村部の現状
バイオ炭を使った、気候変動緩和と農山村振興を導く“カーボンマイナススキーム”

 IPCC第4次報告書(2007年)は、「気候システムの温暖化に疑う余地はない」とし、「20世紀半ば以降の世界平均気温の上昇は、その大部分が人為起源による温室効果ガスの大気中への増加によってもたらされた可能性が非常に高い」としました。そしてこの温暖化によって、地球規模で長期的に様々な深刻な気候変動をもたらすと予測されています。
このように気候変動の原因が私たち自身にあることが明白となる中、一人ひとりが責任を持ち、そして社会全体が一致してその解決に取り組むことが必要です。

 しかしながら現在のところ、京都議定書次期枠組みを決める国際交渉は、各国の政治的や経済的な事情によって難航し進展がみられません。
これに対して将来世代の利益を優先する立場から、市民・地域を主体として気候変動対策に率先して取り組みアプローチすることは、各地域の特性に即した方策を導入することを可能にします。気候変動対策においては、温室効果ガスの吸収源となる森林や農地土壌といった資源が多く存在する中山間地域(以下 農山村部)へ大きな期待が持たれています。しかしながら、森林等はその炭素固定能力だけを見た場合、その長期安定性には不安定要素があり(参考:バイオ炭によるCO2削減)、より長期安定的に炭素を固定する手段の提示が求められます。
また、農林業を中心とする産業衰退は深刻化しており、農山村部において気候変動対策を進めるには、経済的インセンティブをもたらすしくみの構築が同時に求められます。

 私たちはその手段として炭(バイオ炭)による炭素貯留に着目しました。古来より日本人が主に燃料用として利用してきた炭は、古代遺跡から、当時の食物の炭化物が発見されたり、またある実験結果ではその炭素固定期間が5万年以上に亘るとの報告があるなど、長期安定的に炭素を固定すると期待されています。

 このことから、農山村部で発生する未利用バイオマス資源を燃焼利用するのではなく、炭(以下 バイオ炭)にして、農地等への施用を通じて炭素貯留を行うことは、大気中に増加した二酸化炭素を削減に導くことが可能となります。
そして、貯留した炭素分を企業とのカーボンクレジット取引、またバイオ炭の施用された土地から付加価値産物を産み出し、生活者に購入してもらうこと、これらを通じて持続的に温室効果ガスを削減しながら農山村部へ新たな経済効果を産み出すことが可能であると期待できます。

 このような、バイオ炭を使って、気候変動緩和と農山村振興を目指す新たなしくみを“カーボンマイナススキーム”と呼んでいます。

亀岡カーボンマイナスプロジェクトの始動に至る経緯
温室効果ガス削減目標の達成と農山村振興のための“亀岡カーボンマイナスプロジェクト”

 京都議定書が採択された、京都市と山を挟んで西隣に位置する亀岡市は、平成21年1月に亀岡市地球温暖化対策地域推進計画を策定し、2018年に1990年度比で10%の温室効果ガスの削減を目指す目標を打ち出しました。市民、事業者、行政が一体となって削減に取り組んでおり、目標達成に向けて、山林、農地などのバイオマス資源豊富な亀岡市の特性を活かした、より有効な温室効果ガス削減手段の提示が求められます。

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 その亀岡市に位置する保津町は、「丹波富士」とも呼ばれる雄大な牛松山の麓に広がり、山林や竹林など豊富な自然資源を有しています。

 また、JR山陰線や京都縦貫道によって京阪神とのアクセスも比較的良い地理的条件にあり、さらに水稲を中心に二条大麦、小麦、大豆などを生産する府内最大級の農事組合法人が存在し、十分な産業基盤を有しています。その一方で、市内一番の高齢化率、また若い世代の農業離れによりその担い手不足が深刻な状況にあります。
平成23年1月に市は、多くの市民の意見や提言を踏まえ、「第4次亀岡市総合計画」~夢ビジョン~を策定しました。「水・緑・文化が織りなす 笑顔と共生のまち かめおか」を都市像として市民と行政の協働により、未来に向けて常に笑顔を絶やさず、夢や希望を持ち続け、いきいきと暮らせる持続可能なまちづくりを進めています。
また、2001年に「保津町まちづくりビジョン推進会議」を設置し、2007年には、本会議の主導により、町全体を一つの農園として捉えた「水端(すいたん)農園プラン」を策定しました。若い世代が再び農業の担い手となるには、農山村部にあっても資金獲得が可能な新たな社会のしくみが必要とされています。


プロジェクトのフィールド:亀岡市保津町周辺地域クリックで拡大します。

 こうしたことを背景に、2008年11月から地域住民、亀岡市、龍谷大学地域人材・公共政策開発システム・オープン・リサーチ・センター(LORC)、立命館大学地域情報研究センター、地元関係機関などの連携のもと、バイオ炭による炭素貯留を通じた温室効果ガスの削減と都市部から農山村部への資金還流を両立させるしくみの構築を目標として、“亀岡カーボンマイナスプロジェクト”が始動しました。