1.炭素循環について


 ここではなぜ、バイオ炭による炭素貯留が二酸化炭素削減に貢献できるかを解説していきます。まずは、炭素循環(炭素が、大気中の二酸化炭素となったり、植物のからだを構成する一部となったり、炭素の塊である炭になったり…と、様々な形態となって、地球上をぐるぐると回っている状態)という概念について、カーボンニュートラル・カーボンプラス・カーボンマイナスという観点から解説し、その後バイオ炭による二酸化炭素削減について解説します。
カーボンニュートラルとは?

 “カーボン(炭素:C)ニュートラル(中立)”とは、地表上の炭素総量の増減に影響を与えない、資源の利用形態を指します。木材などのバイオマス資源を燃焼した際には、バイオマス資源中の炭素(C)と大気中の酸素(O2)が結合し、二酸化炭素(CO2)が排出されます。しかしその二酸化炭素は、元々植物が大気中にある二酸化炭素を光合成により吸収したものであるため、地表上の炭素総量の増減には影響を与えません。近年、気候変動緩和の動きの中で、バイオマス資源の利用は、大気中の二酸化炭素濃度には影響を与えないという意味で、カーボンニュートラルの概念が用いられています。しかしバイオマス資源の利用(二酸化炭素排出)速度が、植物の光合成(二酸化炭素吸収)速度を上回ってしまうと、地表上の炭素総量は変化しなくても、大気中の二酸化炭素濃度は上昇してしまいます。そのため、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えることなく、バイオマス資源を利用するには、利用に伴って排出される二酸化炭素を吸収する、植物の量を安定的に維持することが必要となります。

カーボンプラスとは?
 石油やガソリンなどの化石燃料は、植物が太古の大気中より二酸化炭素を吸収し、炭素を固定したものです。そのため化石燃料を利用し二酸化炭素を排出することは、地表上の炭素総量を新たに増加させます。このような状態を、先ほどのカーボンニュートラルに比して、“カーボンプラス”といいます。現在気候変動の主な原因として、このカーボンプラスによる、大気中における二酸化炭素濃度の上昇が挙げられています。
カーボンマイナスとは? 
 そして、このカーボンプラスに対して、地表上の炭素総量を減少に導くことを、“カーボンマイナス”といいます。森林等の植物を増やすことは、二酸化炭素を吸収し炭素を固定するため、増加した炭素総量を減少に導くことできます。しかし植物は枯死し微生物の分解を受けたり、山火事が発生すると、再び二酸化炭素を排出するため、安定的に炭素総量を減少に導くことには困難が伴います(CDMにおける植林プロジェクトにおいても、森林による炭素固定の安定性に対する問題性が挙げられています)。また、大気中より直接二酸化炭素を回収し、地中や水中に埋めて貯留するという、二酸化炭素の回収・貯留(Carbon dioxide Capture and Storage:CCS)という手法も注目されています。しかし、高度の技術や設備が必要とされるだけでなく、石油採掘場や発電所などに適用地域も限られるなど、多くの課題が残されています。そうした中、近年、新たなカーボンマイナスの手法として、バイオ炭に炭素貯留が着目されています。
炭素循環炭素循環
解説用語集

注1)カーボンマイナスカーボンニュートラル・カーボンプラスに比 して著者が作った造語。ある国際学会 (The International Biochar Initiative (IBI)) ではCarbon negativeとよばれている。

注2)CDM京都議定書(COP3)メカニズムのCDM (クリーン 開発メカニズム: Clean Development Mechanism)